オール電化とヒートポンプ

                             =オール電化は本当に優しいのか?=

2006年7月


『オール電化』は環境に優しい?最近、よく目にするコピーですよね。

実はそれ、大間違い。でもちょっとだけ正解。

電気はいわゆる二次エネルギーで、他のエネルギー源(一次エネルギー)を使って発電所でつくらなければならないのはご承知の通り。

日本の主力電源は火力発電で もちろん化石燃料を使用します。その宿命として、平均的に投入した一次エネルギーの30〜40%程度しか電力にすることができないのです。

それに送電ロス
(遠い発電所から、はるばる家庭まで運ばれて来る間での放電)が10%程度発生するとして、残りは利用できない廃熱として大気中に放出されてしまう訳で、つまり電気だけを利用するオール電化住宅は、宿命的に一次エネルギーの3分の1分以下の電力を使うという非効率を抱えているわけです。

身近でCO2を発生しないから環境に良い?それは頂けない思考ですよね。

ちなみに同じエネルギー量(1メガカロリー)で出てくる二酸化炭素を計算してみると、表のように電気が最も二酸化炭素排出量が多く、都市ガスが最も少なくなっています。この飛騨では、都市ガスは望んでも手に入りませんからプロパンとなりますが、灯油の方が多少小さくなります。

灯油に比べて都市ガスの二酸化炭素排出量が少ないのは、都市ガスのほうが水素分が多いためなのです。
 
都市ガス  0.227 kg-CO2 / Mcal
プロパン  0.291 kg-CO2 / Mcal
灯油  0.284 kg-CO2 / Mcal
電気  0.415 kg-CO2 / Mcal

が、しかしっ原発の電力(夜間電力)を使い、ヒートポンプで給湯すれば CO2発生量はガス給湯器や石油給湯器と比べて、かなり軽減出来ます。

しかし原子力発電も結局は、地球資源の利用なので、一時エネルギーがゼロと言う訳ではありませんし、もちろんCO2も発生します。

一番の問題点としては、使用済みウランの廃棄問題。これは今後2次利用を検討しなくてはいけませんから、手放しに原子力を肯定はできませんが。はい。
 


厚生労働省:2000年度統計より

そこで本題、ヒートポンプ。

よく夏になると『省エネ』と称し、室内温度は28°程度とキャンペーンが張られますが、実は。夏の冷房より、暖房のCO2発生の方が多いのです。

家庭からの二酸化炭素排出量を計算してみると 冷房は全体の2%なのに対し暖房は16%を越えます。この飛騨と言う地域なら、冬季の暖房消費の率がもっと増える事は容易に想像できますね。

冷房については厳しく言われて、少しでもエアコン利用を減らそうとがんばっている方も多いかと思いますが、実はそれよりもはるかに多い量を暖房や給湯で消費しています。 又この表見ると思いの外、水道の負荷が高いのに気づかれると思います。そう、水道って電気によりポンプで供給されてるんです。水の節約って結構大切ですよね。・・と話がそれてしまいましたので、話を冷房に戻しましょう(^-^;

夏の冷房と同じだけ、冬の暖房や日常の給湯で取組をしたら、8倍以上も効果的に二酸化炭素排出量を減らすことができる訳なんですね、これが。

1日中冷房をつけている家庭では、冷房のエネルギー比率が多少大きくなりますが、冷房はヒートポンプと言う、燃焼では無く、空気の圧縮による熱の移動で冷気を作り出すので、実は思ったほど負荷が大きくない訳です。

エアコンはヒートポンプという原理を使っており、空気を温める為にではなく、熱を移動させるのに使っています。


ちょっと閑話休題=ヒートポンプのしくみ=

ヒートポンプはなぜ低温のエネルギーを高温の熱に変えることができるのでしょうか。
ヒートポンブとは、その名のとおり「熱を汲み上げるポンプ」です。


ヒートポンプのしくみ


ちょうど通常の水ボンプが水を低いところから高いところへ汲み上げるように、低い熱を運んで高い利用可能な熱に変えるところからヒートポンプと呼ばれているわけです。

それではヒートポンブのしくみをもう少し詳しく見てみましょう。左図をご覧下さい。


まず、「冷媒」は熱源から熱を奪った状態でコンプレッサーに戻ります。

この抵圧ガスはコンプレッサーで庄縮され、高温高圧の状態になります。このガスが凝縮器内で低温の水と熱交換することにより、高庄のガスは高圧液へと、そして低温水は高温水へと生まれ変わります。

そして液化した常温高圧の液は膨張弁により急激に減圧され蒸発器内で水と熱交換する事により低圧ガスヘと変化するのです。

この冷媒液が蒸発する際には、蒸発潜熱により、まわりから大量の熱を奪い取ります。
すなわち蒸発器に入ってきた熱源水は熱を奪われ温度が低下した状態でヒートポンプより排出され、そして「冷媒」は熱源から熱を奪った状態でコンプレッサーに戻ります。

これらの課程を繰り返す事によりヒートポンブサイクルが形成されると言う訳です。


電気から熱への転換は、ニクロム線などを使えば非常に簡単と言えば簡単。しかしその効率は全く誉めたモノでは無く、熱への転換は化石燃料の燃焼の方が全然上なのです。

特に、数10℃止まりの高温を得たい場合に、ニクロム線を使うのは、ただ電力会社が喜ぶだけで(失礼・・)ヒートポンプの効率が全く高い訳で。最近では、ヒートポンプを使った乾燥機まで登場してい ます。

ヒートポンプの効率が高い理由は、大気の熱を熱源として利用しているから。0℃といっても、絶対温度は273Kあるので、すでにある温度がある大気から熱を取り出して、高温へと移動させる事になります。まさに、熱のポンプ
と言えるんですね。


さて、ではかしこいヒートポンプ製品の選び方です。

エアコンやヒートポンプ製品のカタログには、COPという数値が書いてありますが、これはCoefficientof Performance、つまりエネルギー効率(仕事率)のことで、消費したエネルギーに対して得られる暖房(冷房)能力との比を示す数字です。

この数値が1.0であれば、消費したエネルギーと同じだけ暖房(冷房)できた ことになります。灯油式やガス式では、どんなに頑張ってもCOP値は『1』となります。

最近のエアコンは、COPが4前後、中には6を超えるものもあって、エアコンのみならず、寒冷地用のエコキュート(ヒートポンプ給湯)もCOP値が4を越える様になってきたので、私は最近になって 、ようやくエコキュートの導入を増やしているのです。

以前のCOP値2程度では、導入コストを考えると余計悪い位でしたので(^-^; やはりこれまでは灯油式に軍配が挙がっていた訳です、

余計悪い?そう、このCOPと言う数字にも一つマジックがあります。

エアコンのCOPは消費した電力に対する比で その電気を発電するのに使ったエネルギーとの比では無いのです。ですからこの値を燃焼式の暖房器具の効率と直接比較するのは不公平。

たとえば中部電力の電気の場合、燃料の39.9%のエネルギーが電力になるそうで、この効率で、COP=4のヒートポンプを使った場合、最終的なエネルギー消費効率は、4x0.4≒1.6というわけです。給湯で言えば、エネルギー消費効率が 78〜86%の石油式給湯器に比べると、約2倍となるのです。それでも
送電ロス温水タンクの熱損失(コレ結構大きいのです)を含めて考えても、 COPが最低でも4、2以上は欲しい所。それで初めて、ヒートポンプというのは、効率が良いと言えるのです

もちろんCOP=6のヒートポンプを使えば、もっと効率はよくなる訳で、高効率である機種の登場が望まれます。そうなって来ると、石油式給湯器より格段に効率が良いことがわかりますよね。

解りますか?この様に機器類は、常に進化しているのです。ヘンな機能いっぱい付いた高い機種や、容量の大きなモノを選ぶより、そこそこ効率良いのを選んで、その機器の寿命が来た時に、また効率の良いモノに替えた方が良い と思われるのです。もちろんモノには寿命ってモノがありますから。

と言った感じで、オール電化は無条件に環境や財布に優しいのでは無く、ヒートポンプ と効率の良い機種によって、初めて環境に優しい方に傾くと言ったカラクリです。
(発電用の燃料と、ストーブの燃料が同じだと仮定した場合ですが)

またそれには、安い深夜電力の力も大きい訳で、原子力様々って所です。今後劣化ウランの廃棄については、動向を見守りたいって思っています。

また暖房については、外気温が氷点下近くなると、 極端に効率が落ちる為、その辺の開発が待たれます。ヒートポンプ使った裏技の暖房についてはまたの機会にでも。

採用する機種を選ぶのに、こんな視点もあるって話でした。