シックハウス症候群って、すっかり市民権を得た言葉になりましたね。
実は、この言葉が出来る前、今から15年位前だったでしょうか。化学物質過敏症なんて全く認知されてない社会で、病院行っても『蓄積化学物質症候群』とか『夏型過敏性肺炎』とかって、良く解らない病名が付けられた上、心の病くらい言われて、虚脱感に悩まされた方、結構多かったのです。
室内の空気質
ここ数年で、室内空気中の汚染物質により、身体に負荷が掛かる事が証明されました。そして、ようやく建築基準法の改正となり、住宅内における常時換気として、0.5回/hや、使用建材のレベル規定が義務となったのは記憶も新しい2003年です。ここで改めて見てみましょう。
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シックハウス症候群(Sick Building Syndrome) |
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建材等からの揮発性有機化合物によって住宅の室内空気が汚染され居住者の健康に影響を及ぼすという問題。シックハウス症候群の症状としては頭痛や疲労感・筋肉痛や関節痛のほか微熱・のどの痛み・視力障害・集中力の低下・不眠・皮膚のかゆみなどがある。主なものとして ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン等の揮発性有機化合物・木材保存剤・可塑剤・防蟻剤などがあるが全て室内に存在するものばかりなのです。 |
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その後、シックビルディング症候群やシックスクール症候群など、室内空気中の化学物質汚染による健康影響が訴えられてきました。
これらの汚染原因の1つとして、室内の内装に使用される材料から放散される化学物質があります。これらの化学物質は、特に新築直後において高い濃度を示すとともに、入居直後において発症することから、新築病と呼ばれるケースもあり、下記の様な指針値が規定されています。
揮発性有機化合物 |
毒性指標 |
濃度規定 |
アセトアルデヒド |
ラットの経気道暴露における鼻腔嗅覚上皮への影響 |
0.03ppm |
フェノブカルブ |
ラットの経口暴露におけるコリンエステラーゼ活性などへの影響 |
3.8ppb |
ホルムアルデヒド |
ヒト吸入暴露における鼻咽頭粘膜への刺激 |
0.08ppm |
トルエン |
ヒト吸入暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響 |
0.07ppm |
キシレン |
妊娠ラット吸入暴露における出生児の中枢神経系発達への影響 |
0.29ppm |
パラジクロロベンゼン |
ビーグル犬経口暴露における肝臓及び腎臓等への影響 |
0.04ppm |
エチルベンゼン |
マウス及びラット吸入暴露における肝臓及び腎臓への影響 |
0.88ppm |
スチレン |
ラット吸入暴露における脳や肝臓への影響 |
0.05ppm |
クロルピリホス |
母ラット経口暴露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 |
0.07ppb |
フタル酸ジ-n-ブチル |
母ラット経口暴露における新生児の生殖器の構造異常等の影響 |
0.02ppm |
テトラデカン |
C8-C16混合物のラット経口暴露における肝臓への影響 |
0.041ppm |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル |
ラット経口暴露における精巣への病理組織学的影響 |
7.7ppb |
ダイアジノン |
ラット吸入暴露における血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響 |
0.02ppb |
総揮発性有機化合物量(TVOC) |
国内の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定 |
400μg/m3 |
※空気中1m3中に1mlの汚染ガスが存在する状態を1ppmと表します。
※1ppbは1ppmの1000分の1を表します(1ppm=1000ppb)
発生源としては、防虫剤・防蟻剤・塗料・壁紙・接着剤・防腐剤・可塑剤・芳香剤等が挙げられます。
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そして学校やオフィスビルだけで無く、室内空気中の化学物質汚染として、自動車室内の空気汚染も挙げられます。
これまで自動車室内の空気汚染としては、外気の自動車排気ガスが自動車の空調系統から取り込まれたことにより、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOCs)が自動車の走行状態や外気の状態に応じて高い濃度で検出された研究報告がなされていますが、それだけでは無く、自動車の室内内装材には、住宅や建物と同様に、揮発性有機化合物(VOCs)を放散する可能性のある素材(接着剤、塗料、天井・床・壁材などの合成樹脂系素材、シートなどの合成繊維系素材)が使用されています。そのため新車時の自動車室内が揮発性有機化合物(VOCs)で汚染されている可能性は、住宅や建物と同様に想定しなければいけません。
自動車内の空気質
オーストラリア産業科学研究省(DISR)の研究機関である連邦科学産業研究機構(CSIRO)が2001年、この問題に関する研究報告を発表しています。
CSIROの研究では、製造後3〜10週間経過したオーストラリア製の2台の新車において、ベンゼン、アセトン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、MIBK、ノルマルヘキサン、スチレン、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOCs)が検出され、それらのVOCsを含めた総揮発性有機化合物(TVOC)としては、最高64,000μg/m3以上の濃度が検出されたとしています。
また、3台目の新車は輸入車で、製造後4ヶ月経過していましたが、それでも約2,000μg/m3のTVOC濃度が検出されています。
またこの研究の中で、試験者の同意を得て調査した例によると
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近くの製造元から販売店まで新車を移送するために、その車を10分ほど運転した後、数日間の間、頭痛、肺の刺激、腫れ物などの症状を呈した販売員。(18ヶ月の中古車に乗り換えたところ、症状はでなかった。)
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公用車として新車を購入して納車後の6ヶ月間、その車を運転している時に症状を呈した公務員。
新車に乗車した時に、意識がもうろうとなった化学物質に敏感な人。
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新車販売時に、販売店の車を定期的にリニューアルするために、製造元と販売店の間で長時間の運転を行って無気力になった販売員(メルボルンからジーロング)
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と言った報告が見られました。
それらを受け、オーストラリアでは現在、国立健康医療審議会(NHMRC)が室内空気汚染低減の目標値としてTVOC室内濃度500μg/m3を勧告しています。また、TVOCはさまざまな揮発性有機化合物の総量なので、健康ベースとした許容濃度を定めるのは難しいのですが、Molhave
Lによって表1の提案が示されています。
不快感/健康影響とTVOC混合物との間の用量/応答関係の提案)
TVOC濃度(μg/m3) |
反応 |
曝露範囲 |
200未満 |
無影響 |
快適範囲 |
200〜3,000 |
刺激/不快感があり得る |
多要因曝露範囲 |
3,000〜25,000 |
刺激/不快感、頭痛があり得る |
不快感範囲 |
25,000以上 |
頭痛に加えて神経毒性 |
毒性範囲 |
更にCSIROの研究では、車内における最初の6ヶ月間でTVOC濃度は約60%まで低下していますが、それでもNHMRCが勧告しているTVOC濃度の目標値には到達しませんでした。
CSIROのヘッドであるSteve
Brown博士によると、「自動車内は、ちょうど住宅やオフィスの室内のように、外気よりも高濃度に汚染されている。そのため新車に乗ると、NHMRCが定めた室内濃度の目標値よりも数倍以上高い濃度の有害化学物質に曝露する可能性がある。これらの有害化学物質への曝露を避けるために、新車購入後の少なくとも6ヶ月間は、運転中に外気を豊富に取り入れるべきである。しかしながら、交通量の多い道路では、自動車排気ガスが入ってくるので、それも困難であろう。つまり私たちに必要なのは、低放散量の自動車内装材である。」と述べています。
CSIROは、住宅や建物を含め、室内空気汚染を原因とする病気や生産性損失により、オーストラリア国内で10億ドル/年以上の費用が発生していると試算しており、政府機関はさらにアクションを行う必要があると述べています。また、健康的な室内空気と環境に配慮した製品を消費者が選択できるように、製品の環境ラベリングシステムとして、グリーン・エアーラベル(Green
Air Label)を開発し、段階的に導入するよう勧告しています。
自動車室内空気中の化学物質汚染に関しては、日本国内では平成12年度室内環境学会において、大阪府立公衆衛生研究所が報告しています。研究グループは、国産のワンボックス型の新車を購入し、実際に使用しながらほぼ1年間、車内の化学物質濃度を測定し続けた結果、納車直後のTVOC濃度が約13,800μg/m3、1年後において約670μg/m3検出しています。
タクシーや長距離トラックの運転手など、長時間自動車を用いる労働者を除けば、一般的に住宅や建物ほど自動車室内で長時間過ごすことは少なく、また自動車室内の空気は空調装置や窓の開放によって比較的早く換気ができますが、検出されている濃度が高いため、揮発性有機化合物(VOCs)による空気汚染をより一層減らすためにも、少し使い方も考えた方が良いかと思います。
=簡単に出来る自動車内の空気質改善方法=
■芳香剤=>出来るだけ使わないか、内容成分に気を配る。
■換気=>気温の高い天気の良い日は、紫外線にあてる様窓を開けて換気してあげる。
■ベイクアウト=>ヒーターにて室内温度を上げて(30℃以上)その後窓開け換気を繰り返す
間違っても『新車のニオイ好きなのよねぇ』なんて、締め切った車内で深呼吸とかしない方が良いかと思いますよ(^-^;
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